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ストーリー詳細
真心を込めて綴られた時の絵巻を静かに味わって。胸を打つ声と響き合う調べに導かれ、ステージと日常が交わるかけがえのない記憶をもう一度心に抱きしめます。

翌日
都立芸術学院 校門前
(凪さん達は、大丈夫だって言ってたけど……)
(やっぱりわたし、なつめさんを傷つけてしまったんじゃ……)
ねえ、あれって水瀬の制服?
なんかこっち睨んでない?
誰かを探してるらしいよ
……?
何だか、向こうが騒がしいような……
見つけた! 中学生!!
!?
な、なつめさん? どうしてここに……?
どうしてって、昨日の続きに決まってるでしょ
続き……?
何? もう勝った気分でいるわけ? だとしたらあまりにもおめでたいわね
言ったでしょ? 昨日のは前哨戦。 あくまでお試しで、ウォーミングアップみたいなもの
あたしの実力はあんなものじゃないんだから!
ほら、さっさとガレージに行くわよ!
まあ? 年下にしてはなかなか弾ける方だとは思うけど? だからって調子に乗らないで
昨日よりもっと難しいフレーズを用意したから!
……もう一回、やってくれるんですか?
は? 当たり前でしょ
(なつめさん…… わたしとまたセッションしてくれるんだ……!)
……なにニヤニヤしてんのよ。気持ち悪いわね
あっ、ごめんなさい! 嬉しくってつい……!
嬉しい? ずいぶんな余裕じゃない。 昨日とは全然違うんだからねっ!
はいっ! 今日もよろしくお願いします!
……で、何でいるのよ
いや〜……こうなるだろうな〜って思ってたから……
どういう意味?
あー、えっと……そうだ、見届け人! なつめちゃんが勝った時に、証人が必要でしょ
……まあいいわ、そこで大人しく見てなさい
……蛍ちゃん
?
なつめちゃん、簡単には認めてくれないと思うけど……
蛍ちゃんなら、きっと大丈夫だと思う。 がんばって
……っ、はいっ!
ちょっとそこ! 何コソコソ話してるわけ?
ううん、何でも?
ふん……まあいいわ。いくらアドバイスしたところで、 本気のあたしに敵うはずないし
今のうちに、負けた言い訳考えとくことね!
10分後
……っ!
……どうでしたか? わたし、ちゃんとやれてました?
……今日はちょっと! 指の調子が悪かったから!
それだけだから!!
え……!? あのっ、なつめさん……
また明日、ってことだと思う
えっと……
あはは、そんなしょんぼりしなくていいって
蛍ちゃんってピアノ弾いてる時は すごいピアニストなのになぁ
また明日。なつめちゃんと私に、すごいピアノ見せてよ
! はいっ、また明日!
翌日
今日こそ本気だから! いい!?
はいっ! わたしもバッチリです!
二人ともがんばれ〜
30分後
…………っ!
……どうでしたか?
なつめちゃん、もうそろそろ……
お腹!
!?
お腹が痛かったの! だからノーカン!!
んーそっか。じゃあ仕方ないね
蛍ちゃん、もう一回だって
お、お願いしますっ!
……ああもう、いくわよ!
(何で……何で勝てないの!?)
(何で全部合わせてくるの、何で全部アレンジできるの!)
(ムカつく、ムカつく……っ!)
(こんなの……こんなの、まるで……っ!)
二年前
なつめが初めてガレージに来た日
……ふう〜っ
……えーっと……
奏多の勝ち……ってことなのかな?
……っ!
自信満々だったのに……
凪ちゃん! オブラート!
……
なつめちゃん、また泣いてる〜
べんきょうもかけっこもおそいし
かっこわる〜い
(全然……変われてない)
(やっと見つけたギターでも、カッコ悪いまま)
(また、笑われる――)
かっっっっっっけーーー!!
……は?
え、え、ギターってそんなことまでできんの!? ずりぃ! ピアノでもやりたい!
は……?
てかすげーなあんた! こんだけわたしが 好き勝手弾いてもついてくるとか!
めっちゃくちゃ練習したろ!
え……うん……
なーなつめ。やっぱあんた、 わたしらのバンドに来いよ!
そんで一緒に、クールな音楽やろうぜ!
(悔しいけど、ちょっと似てる)
(どれだけ難しいフレーズを投げても、 どれだけフレーズの方向性を変えても)
(楽しそうに食らいついてくる、音楽バカ)
(性格は似ても似つかないけど……)
(この子ならきっと、奏多を弾ける)
……
なつめさん……
(あーあ、情けない)
(奏多が見てたら、きっと笑われるわね)
(……ごめん、奏多)
(millsage、守れなかった)
……ぐすっ
なつめちゃん……
……あたしの負け
!
新しいピアノでも何でも、好きにすればいいわ
なつめさん……!
代わりにあたしが抜ける。それでいいでしょ
!?
えっ、ちょっ、待ってよなつめちゃん!
待たない。言ったでしょ、この子が入れば、 それはもうあたしにとってmillsageじゃない
だからあたしはここで――
ダメですっ!
!?
そんなのダメです、なつめさんにもいて欲しいです!
そうじゃなきゃ、millsageじゃないから……! わたしが奏多さんに顔向けできません!
は……? もういい、付き合ってらんない。 あたしは帰らせてもらうから
あ……! 待って、待ってください、 なつめさ――あぶっ!?
蛍ちゃん!? 大丈夫!?
……うう
い、痛そう……思いっきり顔から転んじゃったね……
……いっぱい、セッションしました
?
なつめさんの音楽、いっぱい聴きました。 弾いてる顔もたくさん見ました……!
millsageが大切って気持ち! たくさん、伝わってきました!!
……っ!
だったらやっぱり! 辞めちゃダメです!
なつめさんが諦めちゃったら…… millsageは本当に、無くなっちゃいます!
音楽の中に、奏多さんはちゃんといます! バンドを続ければ、ちゃんと一緒です!
(……そうだった)
(奏多と最初に出会った時も、こんな感じで)
(こっちの言い分なんてお構いなしに、 無理やりあたしの手を引っ張って――)
わたし……もっとがんばりますから……!
奏多さんにはなれないですけど…… 奏多さんと同じくらい、弾けるようになりますから〜!
えっ、ちょっ!? 何泣いてんのよ!? ばか、袖掴まないでってば!
うう……なつめさ〜ん…… 行かないでぇ〜……
こらっ、離してってば!
うーん、ガッツがすごい……
まあ、これはこれは
なつめ先輩……中学生泣かせたんですか……?
何であんたらがいるのよ!
私が呼んじゃった
まほろ〜〜〜っ!!
ぐすっ、なつめさ〜ん……
……っ、こいつ……!
なつめちゃん……私からもお願い。 もうちょっとだけ、一緒にやってみない?
答えを出すのを、もう少しだけ待って欲しいんだ
……そんなこと、言われても……!
お願いします〜……!
……ああ、もう……! わかった、わかったから!
!

ただし、こっちも保留にさせてもらうわ!
……?
今合格したのはあくまで一次テスト! この先もずっとあんたの力を試してやるんだから!
せいぜい覚悟してなさい……蛍!
! ……はいっ!